タイテツ野球馬鹿

勝利の伝導者～勝つために　指揮官たちのあくなき葛藤～
静かに広がる波紋－比屋根吉信元京都大学監督　“勝てないチーム”を“負けないチーム”に－　文：谷上史朗より

当時京都大学硬式野球部部長の寶馨(現高野連会長)さんは西宮北高校の2期生で比屋根先生が大阪体育大時代少し野球部の指導を行っていた時の生徒だったそうです。諸事情で京大野球部の監督不在になりそうな時に寶さんの頭に浮かんだ人物が40年前熱心に指導してくれた比屋根先生だったそうです。しかし比屋根先生は開発した「フルセンス」の普及も兼ね少年野球から大人まで幅広く関わりたいという思いが強く監督就任の誘いを半年間断り続けたそうです。

「寶さんの気持ちもわかる…」悩む中、亡くなった箕島高校野球部前監督の尾藤さんが「京大といえば、わしらがお金を積んで監督をさせて下さいと言っても無理なチーム。こんな機会ないからやったらええ」と豪快に背中を押してくれたと。また高校時代の恩師福島さんにも同じように背中を押され2009年11月に京大野球部比屋根吉信監督が誕生しました。









(比屋根先生のお別れの会で挨拶をする寶会長)
当時関西学生リーグで61シーズン中57回の最下位、4位以上はなく22シーズン連続最下位で連敗街道中の京大野球部。就任した比屋根先生はまず意識改革から始めたそうです。「京大生は理解力・集中力・学習能力も高い。勉強と同じで野球もやるべき事をやれば結果が出る。勉強を言い訳にして逃げ道をつくり、この練習量で強くなれるのか？」と話し発奮させたそうです。

当然反発する生徒もいて「高校野球と大学野球は違うんや」と言うことを聞かない生徒もいたとか…。それでも比屋根先生は「やればこうなる。という光を見せること」。わかりやすい変化で成功例が続くと序々に選手達の目が輝き、初めて采配した春季リーグでは8番の1割打者が3割近い数字を残しベストナインに選出されたり、秋季0勝ながら防御率が2.35と京大過去30年で最高の成績を残しました。翌春のリーグ戦では、通算11本の選手が1シーズン12本の安打を放ち京大19年ぶりの首位打者を獲得。指導4シーズン目の昨秋は最速147㌔の1年生右腕が登場と選手は力をつけてきました。京大野球部は強豪チーム相手に負けるのも競るなど力をつけてきました。リーグ戦で京大初のプロ野球選手になった田中投手(元千葉ロッテ)が完封し60連敗を止めた時、比屋根先生は「他校との差は確実に縮まっている。秋以降勝ち点が取れるよう強い京大を目指していく」と宣言、勝つためには上下関係なく試合に使う。今まで仲良しチーム・上級生優先で試合に出場出来るチームの雰囲気が、勝利した試合は1年生1名・2年生5名と下級生主体で4年生は0名と完全に実力主義となりました。当然4年生から不満の声が挙がったそうですが比屋根先生は「ここで弱気になったらチームも彼らも強くなれない」信念を通したそうです。

2009年11月比屋根先生の監督就任後すさまじい変化を見せる京大野球部は練習試合で、ＰＬ学園元監督で名将中村監督が率いた名商大にも勝利、強豪九州共立大とも接戦を演じるまで成長。自信を深めて迎えた秋季リーグでは開幕戦で関大を破り2002年秋以20季ぶりの開幕勝利スタートを切ると、強豪立命館大とは2試合とも0－1と僅差の敗戦。来年は更に強くなる…ところが「京大・比屋根監督退任」のニュースが…。

「基礎作り、意識改革が出来、選手だけで出来るところまで来た。希望を持って次の世代に譲る」が退任理由。「これから…」という時期の退任。「興南監督就任の時も基礎を作って来いと言われ、5年目に甲子園出場出来た。京大は4年8シーズンが一つの区切りかと思っていた。リーグ戦の戦い方を見て基礎は出来た。だから秋のリーグ戦のときから寶部長には退任の考えがある」と話ししたと。比屋根先生は「選手を見てると自分に頼っている感じが多く、彼らにとってそれが良いのか…選手達はこの先国のリーダーになる逸材。もっと自分の意思で動けるようにならないといけない。これから強くなっていこうというこのタイミングで突き放すのも必要ではないかと。自分+がいなくなれば、これまで教えてきたことを各自で整理してもっと実行出来るようになるはず。その為にも自分はここが引き際だと考えた」と。

比屋根先生は「今は何でも効率主義、合理主義。手間暇をかける事がなく野球界も条件が揃わないと結果が出せない、得るものがないという風潮になっている。その中でスポーツ推薦もない、設備も十分でない、予算もない、選手はアルバイトもするから練習時間も限られている。そんな野球部が結果を出せばこれ以上ないインパクトを与えることが出来る。環境に恵まれない大学や高校の色々なチームに勇気を与えるような野球を見せたい」とも以前に語っていたそうです。

名将比屋根先生、沖縄にも凄い指導者がいたことを知って頂けた嬉しいですね。
県外に憧れを持つ子が多くなっている昨今、県内で…が多くなる事楽しみにしています。










沖縄県高校野球連盟
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理事長　大野 倫
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